有料老人ホームに勤務して「人として接する」 福 島 正 勝 
倉敷敷市にある有料老人ホームに勤務し始めて5年が経過した。正直言って初めの内は入居者の方と何を話して良いのやら戸惑いを感じ、声を掛ることすら怖かった。永年住み慣れた自宅を離れ有料老人ホームに入居した方には人それぞれご事情があってのこと。第2の人生を謳歌し人生の総仕上げをしたいという積極的な方から、余生を静かに送りたいという方までそれぞれである。
そんな中で、私は「おはようございます」「こんにちは」の挨拶を笑顔で交わす事から全てが始まる事を身をもって体感した。声を掛けると笑顔が返ってくる。本当に嬉しそうな笑顔である。ケアスタッフから、ご高齢者が望んでおられるのは『自分は一人ではないのだ。見守りかまってくれる人がいる。これが嬉しいのよ』と教えられ、なるほどなと実感した思い出がある。
現在 入居者の最高齢者は103歳の女性。頭もしっかりしているし会話もまったく支障はない。勿論自立歩行でしっかりした足取り。現在 入居者の平均年齢は80歳。私はこうした方々に『退屈しない人生を送って戴きたい、何か楽しみを感じ、日々の励みとなって欲しい』と願って一昨年から『絵手紙教室』を開いた。昔取った杵柄とは言え私にとっても久々の絵画である。
初め「私は絵心がないからダメよ」「私には無理よ」と言っていた方が、今では教室を楽しみにし、「先生 今度は春の花を描きたいわ」と積極的に声をかけてくださる様になった。教室に集まればお身体のご不自由な方にはみんなが積極的に声を掛け合う。描いた作品をみんなで評価しあう。おしゃべりも飛び交う楽しいひと時である。本当に良い仲間意識が生まれたと感じている。
自分の描いた絵がどうも納得がいかないと「どこが悪いのかしら、手を入れてくださらない」と言う。少しタッチアップするとみるみる表情が変わり子供のような笑みを見せる。完成した喜びである。「早速お友達に送ろう、いやこれは記念に自室に飾るわ」など勢い込んで話してくださる。この絵手紙教室には103歳の女性も参加している。字は驚くほどの達筆であるし、絵のセンスもバツグン。ちょっとアドバイスをすると本当に喜んでくださる。絵手紙教室の終了時間となると、深く頭を下げられ「楽しかったわ! 良い一日になりました。ありがとう」と言ってくれる。
そんな時 私は喜びを感じると共に『真心をもって接する』『人として接する』ことの大切さをしみじみと感じている。
『人生は決して一人ではないのだ。仲間がいる。自分を見守りかまってくれる人がいる』そこに生き甲斐が生まれることを体験した5年間で会った。
2007/4/1